「かあちゃん、おうちに連れて行ってもいい?」
ある日、息子が手の上にのせていたのは、ダンゴムシ。
虫が得意ではないわたしにとって、それは思わず一歩ひいてしまう存在でした。
それでも、真剣な目で訴えてくる息子を見て、気づけば「うん」と答えていました。
虫にあまり興味のなかった息子を、すっかり虫好きに変えてしまったのは——実はある一冊の絵本でした。
それが『ごはんだよ!だんごむし』(石橋真樹子/福音館書店)という絵本です。
\ 👉 『ごはんだよ!だんごむし』(石橋真樹子/福音館書店)を見る!/
この絵本に出会った頃から、実は少しずつ息子の様子も変わりはじめていました。
それまで保育園に行き渋りのひどかった息子が、朝になると「きょうダンゴムシ見つけられるかな」と話すように。
虫を探すことが、外へ出ることのきっかけになったのです。
読んで後悔しているわけではありません。
ページをめくるごとに、「えっ、こんなもの食べるの?」「こうやって暮らしてるんだ」と新しい発見があり、息子も夢中に。でも、あの絵本を読んだことがきっかけで、わが家の“虫との暮らし”が始まったのです。
はじめての飼育は、ダンゴムシ
ちゃんとお世話するって約束だよ?
そう言ってスタートしたものの、結局お世話をしていたのはわたし。
お世話といっても、小さなケースの中に土と落ち葉を入れて、湿らせておくだけ。
それでも「生きてるかな」「ちゃんと食べてるかな」と、気にしているのはわたしばかりで、
息子は次第に興味を失っていきました。

2匹のダンゴムシ。
はじめのうちは、透明のプラスチックケースの外側に道を作って歩く様子を見ながら、「ダンゴムシくん、おはよう」と声をかける息子。
絵本で調べたように、野菜や米粒をあげてみたりもしていました。
でも、絵本のように思ったようには食べてくれず、しだいに息子の関心が薄れていきます。
あーあ、こういうのが嫌なんだよな・・
なんとなく、寂しさのような気持ちがわたしの中に残りました。
2匹のうち1匹が動かなくなり、もう1匹も土の中に潜ったまま出てこなくなった頃には、
息子はすっかり別のことに夢中になっていました。
心配になって土を掘り起こしてみると、素人目にも明らかな軽さ。
ああ、死んでしまったんだな、とわかりました。
外の自然で元気に生きていたのに、うちに来てもらって、こんなかたちで命を終えさせてしまった……。
申し訳ないような気持ちがこみあげてきて、わたしのほうがしんみりとしてしまっていました。
それなのに息子は、「母ちゃん、あとでバスケやろうよ」なんて、あっけらかんとした様子。
せめて、土にきちんと埋めてやることだけでも責任を持たせようと思い、息子を誘って庭へ。
そのとき、息子がふと聞きました。
どうして土にうめるの?
ああ——そうか、と気づきました。
命を授かること、そして見送るという意味を、この子はまだ何も知らなかったんだ。
親にとってはどこかで経験してきた“死”という出来事も、子どもにとっては、まっさらなはじめての学び。
命の尊さを感じるには、もっともっと時間がかかるのだと、
そのとき、はじめて実感しました。
幼児に“約束”はむずかしい。でも——

「ちゃんとお世話する」
「最後まで責任を持つ」
そんな“飼うルール”はもちろん大切だけど、
まだ小さい子にとっては、なかなか難しいことでもあります。
だからこそ、最初から責任を完璧に求めるよりも、
「虫ってすごいね」「この子、生きてるね」と、
生き物に関心を持てることを大切にしてあげたいと思うようになりました。
大人も一緒に学ぶことが、いちばんの近道
飼い方がわからなければ、本を読む。
専門店の人に聞いてみる。
ただし、ダンゴムシの専門家は近くにいないので、今回はこんな絵本を一緒に読みました。
\👉 わが家がきっかけになった一冊/
『ごはんだよ!だんごむし』をチェックしてみる
\ 👉️ダンゴムシが生まれる瞬間が間近に見えた一冊 /
うまれたよ!ダンゴムシ(皆越ようせい/岩崎書店)
\ 👉️ ダンゴムシのオス・メスの違いは?どんな風に脱皮する?わかりやすく教えてくれる/
ダンゴムシ みつけたよ(皆越ようせい/ポプラ社)
わたし自身も、知らないことばかりでした。
ダンゴムシのオスとメスってどう違うの?
ダンゴムシって何食べるの?
ダンゴムシって冬の間どうやって暮らしてるの?
どうやって生まれるの?
一緒に学んでいく中で、息子も自然と興味を深めていくように感じています。
「知らなかったね」「へえ、そうなんだ!」と
大人が学ぶ姿を見せることが、子どもにとっていちばん伝わるのかもしれません。
おわりに|ダンゴムシがくれた“わからなさ”と出会い
ダンゴムシは実際育ててみると、絵本のようになんでも食べる姿は見られませんでした。
でも、きっと状況によっては食べるんだとおもいます。それに、あのときのダンゴムシたちのそばに用意した葉っぱが減っている様子でもなかったし何を食べている姿がわかりませんでした。
絵本を見ながら野菜や米粒を入れてみたけれど、減った形跡もなくて、「ちゃんと食べてたのかな?」と首をかしげる日々。
それでも、息子と一緒に考えて、世話をして、声をかけていた時間は、
たしかにわたしたちの中に残っています。
小さなダンゴムシとの暮らしは、
「命を預かるってどういうこと?」「死んだらどうするの?」という、
答えのない問いに少しずつふれていく時間で。
そして、命の“終わり”に向き合ったあとにも、親子の間には、残る気持ちや言葉がありました。
小さな生き物との暮らしは、
そんな“わからなさ”もふくめて、忘れられない体験になるのだと思います。
【まとめ】ダンゴムシを飼ってみたい人へ|親子で気づいたポイント
\ これからダンゴムシを飼う方に /
- ケースには通気のあるフタ&湿った土が必要
→意外と乾きやすいのでこまめに土をしめらせよう・・! - 野菜くず・落ち葉・米粒などを試したけれど、食べてるかは謎…!
→でも次回はもっと腐葉土を試したいです! - 子どもは興味が続かないことも。親が楽しむ心も大切
- “死んじゃったあと”を一緒に見送る体験が心に残る
- 飼い方の正解がわからなくても、絵本からたくさん学べたよ!
📘 うちで読んだおすすめ絵本はこちら👇- 『ごはんだよ!だんごむし』
- 『うまれたよ!ダンゴムシ』
- 『ダンゴムシ みつけたよ』
今日も、虫かごには新しい住人がいます。息子が名づけて、お世話はわたし。
いつか別れがくるとわかっていても、
「この子、今日も元気かな」とのぞき込む日々は、わたしたち親子にとって、かけがえのない時間です。
命と向き合うって、特別なことじゃないのかもしれません。
小さな虫を通して、「育てること」と「見送ること」を、親も子も、少しずつ、学んでいるのだと思います。